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手順書だけで事故は防げない

 以前、テレビの全国中継網の監視・制御という仕事をしていたことがあります。24時間365日、二人一組で誰かが交代勤務をしていました。何十ものテレビモニターを監視し、制御スイッチ、ヘッドホーンがある部屋でした。
 この部屋のことを、オペレーションルーム・コックピットといってましたから、だいたい想像がつくと思います。原子力発電所やテレビ局の制御室と外観は同じです。

 何も故障などが無い時は、ルーティン作業を淡々とやっていればよいのですが、いざ故障とか苦情、大きなニュースが発生した時にはたいへんでした。僕は一応これでもチーフとして仕事をしていましたから、責任はありました。社内資格認定も、とりあえず「テレビ技術スペシャルA」という立場にいました。小さなものを含めれば、故障や苦情はあるのです。起こったとしても、それを一分一秒の単位で回復措置を行うのがオペレーターの手腕でした。

 そのために手順書というものが用意されていました。これまで発生した故障時の措置やらを参考にして手順書は作られていたと思います。しかし僕はほとんど手順書というものを見ながら故障措置をしたことはありません。やはり、故障の回復措置を行うのは、これまでの経験だったと思います。そして、全体を見る目と個別を判断する技術だったと思っています。

 原発再稼働にむけて電力会社は手順書を作成し、原子力規制委員会に報告しています。九州電力川内原発では、約2000ページの手順書になったというニュースがありました。作成した人は本当にご苦労なことだったと思います。

 テレビの仕事と違って原子力発電所の故障というのは、比較の問題ですがそんなに多くはないはずです。多く起こるようでは困りますし、ましてや福島原発事故のような事故は、起こしてはなりません。

 昨年7月8日に施行された原発の新しい規制基準は、原発のハードな面については決めたとされていますが、実際に制御している人間の問題については、触れていないと思います。手順書を作ることは大切なことだとは思いますが、それを完全に習熟して、いざという時に操作できるというのは不可能だと思います。一人や二人はそういう超人のような人がいるかも知れませんが、全国の原発で、嫌、世界中の原発の作業員をそこまでのレベルに上げるのは不可能だと思います。

 僕の仕事の場合は、疑似的に故障を起こしてそれを回復させるという訓練も行われました。しかし、そういう訓練を行えるのはテレビ放送が終了した深夜の時間です。テレビだから出来たと思います。原子力発電所で、実際に故障を起こして訓練が出来ますか?圧力容器から、ガス抜きをしてフィルター付きベント装置を起動させて放射性物質の拡散状況を確認することが出来ますか?

 もうすぐ母親の17回忌の命日がやってきます。あの日、病院から様態が悪いのですぐに来るようにとの連絡があった時、僕は宿直勤務をしていました。それでも病院に駆け付けることはできませんでした。チーフ級の代りの人に来てもらって、ようやく病院に駆け付けた時には母は少し前に亡くなったということでした。忘れもしません。しかし仕方がないとも思いました。責任感を自慢するのではないのですが。
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